雅が甲斐田先輩のもとへ向かわなかったのは初めてだし、逆に甲斐田先輩が教室まで入ってきたのも初めてだ。



「俺はジャージのほうがいいな」


「お、女っぽいほうが先輩も好きだと思うんで…、当分はスカートのつもりです、」


「………」



あのう、もしもし、誰か説明をお願いしまーーす…。


甲子園が終わって、今では3年生は部活には自由参加らしく、だからこそ甲斐田先輩は短髪ヘアに変わっていた。

たったそれだけで部活一筋ではないのだと思わせてくる。


ってことは…、ってことはだ。


恋愛解禁したってこと…?



「先輩!こいつがスカートとか、先輩もびっくりっすよね!?」


「だってストレート130は出しますよ丸井って!俺より肩つえーっすもん!」



からかうように会話に混ざってくる野球部。

甲斐田先輩はそれまで柔らかくて爽やかな空気をかもし出していたけれど、突如ぶわっと重くなったような…。



「お前ら、今日グラウンド100周だからな」


「「え!?なんでっすか…!?」」


「俺の彼女を馬鹿にした罰」