「───雅」


「っ~!!」



ドアの前から久しぶりのお呼びがかかると、雅は言葉にならない動きで立ち上がった。

今までも似たような反応はしていたとしても、ここまであらかさまではなくて、すぐに尻尾を振って向かっていたのに……。


まさかの立ち上がったまま挙動不審だと。


あれ……?

それより今、甲斐田先輩…、“雅”って名前呼びした……?



「甲斐田先輩!足はもう大丈夫なんすか!?」


「大丈夫ではないけど、昨日で退院って言ってあったろ」


「部員みんな待ってました…!!マジうれしいっす!!」


「はは、ありがとな」



2年A組の野球部に囲まれながらも軽くあしらいながら、松葉杖を使ってこちらへ近づいてくる甲斐田先輩。



「雅、制服にしたのか」


「あっ、まあ…、はい、イメチェンで、」


「……ジャージに戻せる?」


「えっ、…いや、たまには着ないと勿体ないんですよ…」



ん…?え…?

なんか、なんかさ、今までと空気感がぜんぜん違いません……?

だって部活以外のこと話してるよ…?