なにがいいの。

どうしてそんなに優しい声をして、甘い顔をしているの。


だからこういうときはまったく関係ないことを考えるんだ、ゆら。



「そ、そういえばルーナちゃん、どこ行った…?」


「死んだ」


「死んでない死んでない…!あとで一緒に謝りに行くんだよ…?」



初めてすぎる夏はこうして終わった───と、思っていたのに。



「本当に受けなくてよかったの?大手芸能事務所だよ?」


「興味ないし、そしたら余計に距離置くでしょ、あんた」


「えっ、でも近づきすぎるのは良くないって…」


「俺が言ってんのはそういう意味じゃない」



無事に撮影が終わった頃、やっぱりナナちゃんは関係者さんからスカウトを受けた。

あの仕事に対する熱心さが逆に反響を呼んじゃったみたいで。

ぜひうちの専属モデルにならないかって。


けれど「こーいうのは最初で最後のつもりだったんで」と、キッパリお断りしていた。



「でも完成品たのしみだね~」


「2冊は買って毎日眺めるんでしょ」


「うん、もちろん!まさか私も雑誌に載っちゃうなんて夢みたい…」


「俺的には顔出ししてくれたほうが良かったけど」


「それはぜったいダメ…!」