「わ、わ、近い…!」


「…さっきの変顔たのむわ」


「え、この至近距離で!?」


「だからこそ」



寄りかかるように肩に置かれた腕、おでことおでこがくっつくギリギリ。

これが撮影中だということを一応は覚えていた私は、目の前のイケメンの頼みを聞いてしまった。



「ふっ、ははっ、この距離だと破壊力10倍になる」


「っ…!」



こつんっと、おでこがぶつかって。

目の前いっぱいに見たことないような笑顔。


─────カシャッ!


ナナちゃんの背中に響いたシャッター音。

その角度からだと、まるで男女が路地裏で隠れてキスをしている光景に見えるんじゃないかって。


だから今の顔は、私にしか見えていないものだ。



「おっけい!最高っ!表紙に続いて良いのが撮れた…!!」



苦しい、くるしい。

ドキン、ドキン、ドキンと、繰り返しては止まることなく響いてくる。


なんだろう……これ。

あの笑顔はズルい、反則だ。



「…かお真っ赤だし。それも変顔?」


「ちっ、ちちちちがうよ…!?」


「なら…いいけど」