お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。





「十波くん…!相手はルーナちゃんだから優しくしてあげて…!」


「……どこの高校だの、家族構成に親の仕事、彼女は居るか居ないか、初体験はいつだ、最終的には俺の大切な人を馬鹿にしてくる。
これがモデルの仕事ですか。良いご身分だな」



しんっと、静まり返ってしまった撮影現場。


それまで周りも自分の仕事に夢中で、彼らがどんな会話をしているかはほとんど聞いていなかったぽくて驚いている。

私だってふたりがそんな内容を話していたなんて、さすがに思ってもいなかった。



「もっとちゃんと詳しく説明してくださいよ。俺の苦手なものとか場所とか、一切聞いてすらこなかったでしょ」



高所恐怖症、閉所恐怖症、女性恐怖症や特定のものに対するトラウマ。

世の中にはそういった目には見えない症状を抱えている人がたくさんいる。


だからナナちゃんも、最初に言われていたならこんな苦しい思いはしなかったのに。


サプライズをするならばせめて2回目以降じゃないのかと私も思っていた。

ぜんぶが初めてのことで、モデル経験すらない、ましてや一般人相手なのだから。


だからこそしっかり前もって説明する義務があったんだ、この人たちには。