「……芸能人気取り?それはお前だろ」
「へ?」
「ただグランプリ取ってたまたま流行に乗れただけ。周りは“おまえ本人”を見てるんじゃなく、“流行りに乗らなくちゃいけない自分”を見てんだよ中高生なんか。
事務所はそこに乗っかって金儲けのためにお前を利用してるだけ」
「ちょ、急になんなの…?」
「おまえ自身のことなんか大して誰も見てねーよって言ってんの。ドロッドロだしな。
てか、頑張って二重まぶた作って必死なアイプチ取れかかってるけど大丈夫?」
「うそっ、やだあ…!ちょっとメイクさん!どうなってんの…!」
周りの動きが止まったことと、すごく低くて強めの声が聞こえたことで、私の耳にもようやく届いてくる会話。
とうとう耐えきれなくなった彼は反撃を開始してしまったんだと。
うん、でも確かにこんなこと聞いていなかったもんね。
神谷さんもサプライズでしてくれたのはありがたいけど、もしそれを説明のときにせめて私にだけ話されていたら対処法を考えることができた。
たとえば相手をルーナちゃんじゃなくて、同じ世代のメンズモデルさんにするとか。
周りの優しさが裏目に出ちゃった……。



