「ふふっ。わりと動きやすくて、最近は気に入ってるんだよ?」
剥がれかけていた布団をかけ直してくれる姿は、記憶のなかの母親を映し出した。
「たぶん男みたいだって馬鹿にされてる」
「あははっ、そうかもね」
「センスわるいとも言われてるはず」
「え~、格好いいと思うのに」
こうして話す穏やかな時間が、泣きたくなるほどに俺の胸を揺らした。
俺がどんなに当てつけのような生意気な口を利いたとしても、微笑んで、嬉しそうに、優しく返してくれる。
「お腹すいてる?お粥もあるけど、もしかしたらって冷凍パスタも買ってきちゃった」
「…まだいい」
「そう?じゃあ何かあったら───」
そいつが言葉を止めてまで見つめてくるのは、俺が咄嗟に腕を掴んだからだろう。
気づけば焦ったように引き留めていて、これじゃあ「行かないで」と言ってる小学生みたいだ。
「…敬礼、」
「……ふふっ、はい!」
俺の前ではいつだって健気に振る舞おうとしていた母親が、ここにいた。
いつもいつも俺のことだけを考えている人。
俺のためなら何だってしてしまうような人。



