馬鹿だったんだ、俺は。
すごい馬鹿だったんだよ。
びくびくしていて、地味で、目立たないような女子生徒。
母さんと正反対のそんなタイプなら大丈夫だろうって、つらい思い出を塗り替えてくれるだろうって。
利用するように妥協で付き合った、中学2年の冬。
『に、似合わないよねやっぱり…。わたしなんか地味だから…』
『…いや、いいんじゃない』
『お、お世辞ありがとう…』
『…お世辞とか言えるほど優しくないけど俺』
でも、ちゃんと楽しかった。
ちゃんと仲良くなれて、好きになって、ちゃんと付き合っていた。
初めて行った七夕まつりは俺から誘った。
そこに現れた彼女を見て、俺も浴衣を着てくれば良かったと後悔したくらい。
『ねえ佳純~、あんたどうやって十波くんを落としたの?』
『なんか弱味でも握ってんの?だってあそこまで女に興味なさそうだった十波くんだよ?付き合えるなんて奇跡じゃん!』
女のこういうところが嫌いだ。
寄って集って脅すように囲んでは、そうやって根掘り葉掘り聞くんだ。



