あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

「アリサ」

 王太子殿下は、いつものように両開きの扉を豪快に開けて入ってきた。

 王族付きの親衛隊の兵士たちは、図書館の外で控えている。

 王太子殿下が中に入らないようお願いしているからである。

 この王宮内の図書館は、国民にも開放されている王宮内の唯一の施設である。ここには貴重な文献や資料が山ほどある。それを上流階級というかぎられた人々しか利用できないということは、この国の文化発展の妨げになる、と王太子殿下が国王に直訴くださったのである。