あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

「お兄さんはだれ?」

 女の子が尋ねた。その子の母親は卒倒しそうになっているけれど、子どもたちにわかるわけもない。

 王太子殿下は母親に首を振ってから両膝を折り、彼女に目線を合わせた。

「お兄さんは、アリサ先生の婚約者なんだ」
「ええっ?」

 叫び声をあげたのは、子どもたちではなく母親たちである。