あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

「うるさい、うるさい、うるさいっ!」

 ガブリエルが突然キレてしまった。

 彼は昔からそうである。自分の思いどおりにならなかったり、都合が悪くなるとすぐに癇癪を起すのである。

 彼はズカズカとわたしたちに近づいてくるなり、わたしの腕をつかんで乱暴に自分へと引き寄せた。

「この忌々しい火傷の跡が悪いのだ」

 そして、見当違いのことをわめきながら、髪をひっぱりはじめた。

 周囲から悲鳴や非難の声が上がる。

 そのとき、またあらたな声が上がった。