「理由ですが、これをご覧ください」

 彼がちかづいてきた。すると、うつむきかたまったままのわたしの左半面をおおう髪を、ぐいっとつかんだ。

「……。ははっ、白粉でうまく隠したじゃないか」

 彼は、ささやくように言った。

「今はうまく隠していますが、彼女の左半面は火傷の跡があって醜いのです。ほら、ご覧ください」

 彼は、髪をつかんでいない方の手でわたしの左半面を荒っぽくこすった。

 あまりの暴挙に抵抗もできない。

 白粉がとれてゆくにつれ、周囲の人々が息をのんだりうめき声をあげたりするのがわかる。