あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

 いっそ図書館に逃げ込みたい。
 わたしの城ですごしたい。

 立派な馬車から降りると、ソフィアがひきとめるのを無視して宮殿に駆け込んだ。

 彼女と並んであるくのなんてまっぴら。余計にみじめになってしまう。

 宮殿内にある大広間へと向かう多くの人たちの間に紛れ、出来るだけ目立たないようにする。

 人の流れにのり、大広間にいたった。専属の楽団が美しい曲を奏でる中、すでに多くの人々が優雅に踊っている。

 踊るつもりなどまったくない。相手もいないことですし。

 さっさとテラス席へと続く、ガラス扉のほうへ向かった。