あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

 薄いピンク色は、わたしがもっとも好きな色である。

 ティーカネン侯爵家自慢の荘厳な玄関ホールで、ソフィアと会った。

「これであなたもすこしは見られるようになったわね。今夜は、わたしの引き立て役になってもらうんだから、それなりの容姿じゃなきゃ。さあ、行くわよ」

 彼女のあまりの美しさと勢いに、わたしは何も言えないでいる。

 子どものころと同じように。

 ティーカネン侯爵家の四頭立ての立派な馬車に乗り込み、王宮へと向かった。

 今夜ばかりは、王宮に行きたくない。

 涙が出てきそうなほど、嫌で嫌でたまらない。