あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

「来週、王宮で行われる舞踏会でこのことを(おおやけ)にするつもりだ。だから、きみも出席してくれ。いつもみたいに図書館にこもっているんじゃなくってね。そのとき、きみに紹介するよ。ぼくの新しい伴侶をね。ソフィア・ティーカネンだよ。その場で婚約発表もするつもりだ。当日は、ぼくの両親も彼女の両親も出席するからね。楽しみでならない。というわけで、アリサ。きみは脇役なんだ。脇役がしっかりと脇をかためてこそ、主役がひきたつ。だから、ぜったいに来てくれよ。じゃあ」

 彼は、一方的に告げるとさっさと去ってしまった。

 いつものように顔を横に向けたまま、それをわたしの方に向けようともせずに。

 この日、わたしが司書を務める王宮内にある図書館で、婚約を破棄された。