あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

 そうだった。王太子殿下は、書庫にこもるときはときおりそう言ってわたしに一緒にいるよう、頼まれるのである。

 ここに幽霊や魔物の類が出るという噂はきいたことはないけれど、たしかに一人きりだと寂しいかもしれない。

「かしこまりました。それではすぐそこの区画の書棚を整理しておりますので、御用がございましたら……」
「い、いや、すぐ側に、あ、いや、そうだ。ほら、椅子を持ってくるから、ここに座っていてくれないかな?」