あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

「アリサ」

 一礼して去ろうとした瞬間に呼びとめられてしまった。

「その……。仕事、たくさんあるのかな?」
「二、三ございますが、どれも急ぎではございません。何かご要望がございましたら、すぐにいたしますが」
「だったら、いっしょにいてくれないかな?」
「はい?」
「あ、いや、その……。書庫は、どうも怖くてね。一人っきりだと不安になってしまう」