あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので

「アリサ、何かあったのかい?」

 いつものように顔をわずかに伏せたまま書庫へと続く階段を降り始めたとき、王太子殿下が尋ねてきた。

「い、いえ、何もございません」
「気のせいかな?元気がなさそうだ」
「いつものように元気ですよ。殿下、どうぞ」

 王太子殿下の気遣いには感心してしまう。わたしのちょっとした口調や態度から、変化を読み取ってしまうのである。