「アリサ、いたずらに時間がすぎてゆくだけだ。もうそろそろ潮時だと思う。婚約を破棄する。今後はおたがいに縛られることなく、ぼくはぼくの、きみはきみの、それぞれの伴侶と人生を歩めばいい」

 わかっていた。婚約を破棄されることを。
 だから、婚約破棄を告げられても、「ああ、ついに」というくらいで衝撃を受けたほどではない。

 それに、彼がわたしを愛していないのとおなじように、わたしも彼を愛していない。

 彼とわたしは、幼馴染。だから、当たり前のように親どうしがそう取り決めただけのこと。

 たったそれだけのこと。

 それだけのこと。