「え?」
香魚子がキョトンとしていると、デザートのプレートが二人分運ばれてきた。片方には小さな花火がついていて、そちらが香魚子の席に置かれた。
(え…?)
「これ、周さんと私、逆ですよね?」
「間違ってないよ。自分にバースデープレートなんて頼まないよ。なんて書いてあるか読んでみて。」
(……?)

—Will you marry me?—

プレートに書かれていたのはプロポーズの言葉だった。

「え…?」
香魚子は状況についていけていない。
「今日は俺の誕生日だから、俺の一番欲しいもの貰おうと思って。」
そう言って、周は小さな箱を取り出した。
「………」
「福士 香魚子さん、俺と結婚してくれませんか?」
周の差し出した箱の中には指輪が輝いていた。
「………」
香魚子は感極まって涙を(こぼ)し、こくこくと(うなず)いた。
「…はい」
———はぁっ
周が安堵の溜息を漏らした。
「断られたらどうしようかと思った。緊張した〜。」
「断るわけないじゃないですかぁ…」
香魚子は涙声で言った。
「香魚子には実績があるから。」
周は眉を下げて笑った。

帰り道
「ところで、他人の名前のことまで気にしてる香魚子が自分の名前のことに気づかないわけないと思ってるんだけど…気づいてたでしょ?明石(アカシ) 香魚子(アユコ)、アカシアだって。想像したことあった?」
周はいたずらっぽく言った。
「…いつかそうなったらいいなって思ってました。だから今日、ミモザがもっともっと大好きになりました。」
香魚子ははにかんだ笑顔で答えた。

fin.