「…どうなったんですか…?」
香魚子は恐る恐る聞いた。

「福士さんのカードが採用になりました。あの場にいたほとんどの人が9点とか10点つけてて、幹部会議も満場一致、だそうです。」

不正が影響を及ぼさない、圧倒的な結果だった。
「すっげー…」
(あまね)も純粋に驚いていた。
「………」
香魚子からは言葉が出ない。
「香魚子?」
「…………えっと…あの…」
言葉を発しようとする香魚子の目から、ほろっと涙が(こぼ)れた。
周が差し出したハンカチで、香魚子は目を押さえた。
「ごめんなさい、なんかちょっと…びっくりしたのと……その…安心しちゃって…」
「………」
「ミモザのデザイン…本当に大切なデザインだったから…。最後の最後までコンペに出すのも迷ってて、出した後も不安で……はぁ…良かったぁ…」
周は微笑みながら香魚子を見ていた。
「……明石さん、ありがとうございました。それから…」
香魚子は鴇田(ときた)の方を見た。
「鴇田さんも、ありがとうございました。」
「え、いや、俺は別に何も…」
驚いて否定する鴇田に香魚子は首を横に振った。
「元のままのコンペだったら、きっとこうはなってないので…。私にとって、本当に本当に大切なものだったので、進行役代わってくれてありがとうございました。」
香魚子は涙を浮かべた目で鴇田に微笑んだ。
「…そんなに…」
「え?」
「コンペなんて何度もあるのに、そんなに大切とか…なんていうか、大袈裟じゃない?」