コンペの結果発表日
香魚子は休憩スペースでいつものようにラフを描いていた。
「福士さん。」
聞き慣れた声で呼ばれ振り返ると、周がいた。
「…明石、さん…。」
周は香魚子のテーブルに座った。
香魚子は思わずキョロキョロと辺りを見回してしまう。
「そんな気にしなくて大丈夫だよ、“福士さん”。付き合う前だってこんな場面何回もあったでしょ。」
「でも…なんか私、最近“福士さん”て呼ばれる方が変な感じがしちゃって…。変な顔になっちゃってそうです…。」
「良い傾向じゃん。」
香魚子が両頬に手をあてて困ったように言うと、周が笑って言った。
「コンペの結果って出たんですか?」
香魚子の質問に周は首を横に振った。
「…時間かかってますね。」
「結果出すのに時間がかかってるのか、俺がいろいろ言ったことが会議で問題になって時間かかってるのか、どっちかわかんないけど…落ち着かない?」
香魚子は(うなず)いた。
「抱きしめてあげようか?」
周は、頬杖をついていたずらっぽく笑って言った。
「何言ってるんですか…!」
香魚子が顔を赤らめて拒絶した。

「なにイチャついてんスか。」