———は〜〜〜〜〜っ
明石はこれ以上ないくらい大きな溜息を()いてしゃがみ込んだ。
「あの…」
香魚子は心配そうに(かが)んで覗き込んだ。
———むにッ
(え…)
明石が香魚子の頬を両側から手で潰した。そして立ち上がった。
「ビビらせないでよ。」
「えっと…明石さん…?」
「福士さんが俺を好きで、何の問題があんの?」
「だって…」
「俺も福士さんのこと好きだけど、会社に誘ったんだよ?」
「え?」「え??」「明石さんが…?」「私を…?」
香魚子は全くピンときていない。
「かなりわかりやすくアピールしてたと思うけど。鈍いね。」
「私のデザインを好きでいてくれてるんだとは思ってたんですが…」
香魚子は困ったような顔をしている。
「俺は福士さんのデザインも好きだけど、デザインの事になると顔つきが変わるところも、楽しそうにデザインしてるところも好きなんだよ?」
「え……」
香魚子の顔が真っ赤になったのが、夜の暗がりでもわかる。
「でも、だったら尚更社員にしたらダメなのでは…」
明石は首を横に振った。
「言ったじゃん、付き合ってようが不倫してようがどうでもいいって。仕事に私情を挟まなければいいってスタンスだよ、俺は。」
「自信ないです…」
「俺は良くないものに良いとは言わない。」
たしかに明石はそうだろう、と香魚子は思った。