「ねぇねぇ!本っ当〜に可愛かった!新人!」
「新人て明石さんのペアになるって子?」
大きく何度も頷いているのは、いつも明石の噂をしている香魚子の同僚だ。
「あ、でも可愛いよりは…美人系?営業の女子だったらダントツっていうか…社内でも一番かも。」
「えー、なんかそこまでいったらもうビジュアル良すぎなペアで社内公認になりそうじゃん。なんの公認かわからんけど。」
「あーなんかでもーそういう理由でペアにしたって噂もあるよー。営業のビジュアルって売り上げに影響あるらしいし。」
明石の名前が出ると、ついつい香魚子も気になって耳だけそちらに向いてしまう。
(“噂”とか“らしい”とか、明石さんの営業成績ってビジュアルのせいじゃないと思うけどなぁ…。商品をあれだけ熟知してる営業さんて他にいるのかな。…でも…美人な新人さんとペア、かぁ…。)


「今日はJOFT(ジョフト)の本部商談だから、その前に店舗も見て行こうか。」
「はい。何かお持ちしましょうか?」
会社の廊下で話しているのは明石と新入社員だ。
「いや、サンプル結構入ってて重いから俺が持ってくよ。」
「では資料はお持ちしますね。」
「あ、福士さん。おつかれさま。」
たまたま通りかかった香魚子は二人のやりとりを見ていた。
「おつかれさまです。」
「この子、新人の川井(かわい)さん。」
明石が新人を紹介する様に手を動かした。
「あ、はい。この前うちのフロアにも挨拶に来てくれて…。」
いかにも新入社員といったスーツに一つ結びの川井 (すみれ)はペコリと頭を下げた。
「企画デザイン部の福士 香魚子さん、ですよね。」
「え!すごい!フルネームで…私いまだにほとんど顔と名前一致してないです…。」
「福士さんらしいな。」
明石は笑った。
「川井さんはデザイン部希望だから、そのうち同僚になるんじゃない?」
「あ、そっかぁ、そうですね。その時はよろしくお願いします。」
香魚子は微笑んだ。
「はい!よろしくお願いします。」
川井は緊張気味に笑った。
(かわいいなぁ。たしかに美人だけど、それだけじゃなくて一生懸命な感じでかわいい。)