僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

『どんな行動の裏でも、自分の利益を考えてるのは当たり前だと思う。完璧な、神様みたいな人間なんていないんだから。相手を思いやる気持ちが少しでもあればそれは優しさだ。だから夏生さんは、優しい人だ』

無価値なはずの私を、天宮くんは否定しなかった。

私のしたことを、受け入れてくれた。私の存在を、認めてくれた。

その夜、私はベッドの上に寝転がりながら、天宮くんのくれたその言葉と、ドアの隙間から見た高安くんのほの暗い目を繰り返し思い出していた。

完璧な人間なんていないんだから、完璧じゃない私が誰かを救いたいって思ってもいいんじゃないだろうか。
 
それなら、私に何ができる?

高安くんは誰かの助けを拒むだろう。

助けが必要だとも思っていない。

だけどきっと、自分でも気づいていないような心の奥深くで、本当は誰かの助けを待っている。

窓の外はすっかり暗くなっていた。

灰色の雲が流れ、煌々と光る半月が姿を現す。

《今日の月、きれいだね》

思い出したのは、中学生の頃の、SNSでの〝くろすけ〟とのやり取り。

《うん、きれいだね。満月なのかな》

《ちょっと歪な形だから違うと思う。満月はたぶん、明日じゃないかな》