僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

幸いにも、彼に私と高安くんの会話は聞こえていなかったみたい。

今起こったことを言葉にすることができずうつむく私を、天宮くんは黙って見つめていた。

肌寒さすら覚える灰色の世界で、天宮くんの手の感触だけが、ひたすらあたたかかった。

私の手をすっぽりと覆えるくらい大きくて、少しだけ骨ばった、いつもカメラを器用に操作しているあの魔法みたいな手。

男の子と手を握り合っていたというあり得ない状況にも関わらず、今の私にとって、そんなことはどうでもよかった。

それくらい私の弱い心は打ちのめされていた。

天宮くんのくれる温もりだけを頼りに、どうにかこの場所に立てている。

「ちょっと行きたいところがあるんだけど、いい?」

天宮くんは私が落ち込んでいる理由についてそれ以上追及せず、片手で自転車を押し、もう片方の手で私の手を握ったままどこかに向かいだした。

私は素直に天宮くんについていくことにした。