僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「…‥分かりました」

しばらく押し黙ったあと、髙安くんは静かに答えた。

そして、逃げるように玄関のドアを閉ざそうとする。

とにかく早く家の中に戻りたい……そんな高安くんの思いが、じりじりと空気を介して伝わって来た。

まるで、過去の私を見ているようだ。

行かないでほしい。

あの沼の底のように暗い世界に、戻らないでほしい。

世間と何のつながりもないあの世界は、安らげるようでいて、実際は途方もなく孤独だった。

あの恐怖を思い出しただけで、泣きそうになる。

「あの……!」