僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「無理に来なくていいと思います。行かなくても高安くんは悪くないし、行けない方が普通だと思います」

「え……?」

高安くんのほの暗い目に戸惑いが浮かんだ。

きっとこれまで、何度もこういった誘いがあったのだろう。

午前中だけでいいから。ちょっと顔出してすぐに帰ればいいから。

不登校になってしまった子供を、学校に連れ戻そうとする大人はたくさんいる。

まるでそうすることが正解で使命かのように。

大人たちは、子供がちょっと行けたら喜んで、行けなくなったらまたがっかりする。

そのたびに、大人の言うとおりにできない自分を、子供はもっと嫌いになってしまう。

私もそうだったから、よく分かるんだ。

「でも高安くんは写真部員だから、写真部員には全員お知らせしてることだから、部長はこのプリントを渡そうと思ったんだと思います」

また学校に来てほしい。写真部に顔を出してほしい。
 
二階堂部長にはもちろんそういう気持ちがあるだろうけど、無理強いするつもりはないようだった。

大切なのは、高安くんが自発的に動き出すことだと、たぶん彼女は分かっている。

学校に、いつでも高安くんのいる場所はあるから。

二階堂部長は、きっとそういう思いで、連絡だけは途絶えさせないようにしているのだろう。