僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

高安くんの家は、住宅街の一角にある、ありふれた一戸建てだった。

白っぽい外壁の三階建て、ベランダのついた二階と三階。

家の前はオープンな駐車スペースになっていて、茶色い軽自動車が一台停まっていた。

「僕はここで待っとくから」

家の斜め向かいにある電柱の陰に隠れる天宮くん。

私は勇気を振り絞り、インターホンを押した。

ピンポーンと間延びした音が響く。

だけどどんなに待っても反応がない。躊躇しつつも、もう一回押してみる。

それでも出る気配はなくて、あきらめて帰ろうとしたとき。

〈……はい〉

変声期を過ぎたばかりみたいな男の子の声が、インターホンから聞こえてきた。

もしかして、高安くん本人?

お母さんが出るだろうと想像していただけに、一気に緊張が高まった。

「あの、青里(あおり)高校の夏生って言います。プリントを持ってきました」

〈なつき……?〉

「その、会ったことはないんですけど……」

インターホンの向こうが静かになる。

いつまでたってもそれ以上の返事はなく、家全体が静まり返っていた。

無視されたのかな。