僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

今さらのようにヒヤッとして言葉をのみ込んだ。

夏生さんの家はどこ?と聞かれるのが怖かったのだ。

私の家は、ここからかなり距離がある。

中学時代の知り合いに会わないようにするためだ。二時間もかけて通ってると答えたら、たいてい『ええっ、どうして?』というような反応をされた。

この学校がものすごく気に入ったから、と誤魔化していたけど、そのたびに不登校だった過去に気づかれるのではないか怯えてしまう。

そしてまた、自己嫌悪が嗚咽のように喉から込み上げるのだ。

だけど天宮くんは、それ以上会話を膨らませる様子はなかった。

単純に、私の家の場所なんか興味がなかったのだろう。