僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

二階堂部長に教えてもらった高安くんの家は、学校から歩いて十五分くらいのところにあった。

いつもの裏門ではなく正門から出て、歩き慣れていない道を行く。

カラカラという自転車の音が、すぐ後ろに近づいてきた。

紺色の自転車を押しながら、天宮くんが追いかけてきている。

「あれ? 帰り、こっちだっけ」

「違うけど、僕も一緒に行くよ。高安の家知ってるし」

おどおどしながら、天宮くんが言う。

土地勘がないのに高安君の家までちゃんとたどり着けるのか不安だったので、天宮くんが案内してくれるのは助かる。

「ありがとう。……でも、大丈夫かな。高安くんは、知り合いに会いたがらないって、二階堂部長が言ってたけど」

「大丈夫。隠れて見守ってるから」

そのとき、ちょうど信号に差し掛かる。

タイミング悪く赤になったのに気づかず天宮くんが進もうとしたものだから、私は慌てて彼のシャツを引っぱって止めた。

「天宮くん! 赤になってる」

「あ……」

決まずそうに、一歩後退して信号の前で止まる天宮くん。

どうやら、少し緊張しているみたい。

何気ないふうを装っているけど、本当は勇気を出して私を追いかけてきてくれたのだろう。

自転車を押す天宮くんと、その斜め後ろを歩く私。

夕暮れの空は曇っていて、茜色と灰色がジグザグに混ざったような空模様をしている。

頬を撫でる湿った六月の風、昨日の雨でできた水たまり、カラカラと響く天宮くんの自転車のチェーンの音。

「天宮くん、自転車通学だったの? この間歩きだったから、電車かと思ってた」

「雨の日は歩いてるんだ。三十分かかるけど、歩けないこともないから」

「ふーん……」