僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「こんな誰も見てへんような本棚やなくて、もっとでかい本屋並べれるようにがんばりなよ」

二階堂部長が、おもしろがるように言う。

「でもここの写真集のラインナップ、なかなかですよ。歴代の写真部員はきっとセンスよかったんですね」

「前は部員もそこそこいて、部費もたくさんあったらしいからね。部費使い切らんと来年度の予算減らされるから、年度末に余ったらとりあえず写真集買うとこ、みたいなかんじで増えていったみたいやで……よしっ、印刷!」

二階堂部長が、勢いよく立ち上がった。

本棚の一角に置かれたプリンタから音がして、A4用紙が何枚か排出される。

「これ、夏合宿のお知らせ。この間辰木先生と相談して、日程とか費用とかぜんぶ決めてん。親に印鑑もらって提出してな」

辰木先生とは、写真部の顧問の先生だ。

美術部と写真部の顧問を兼ねているらしく、こちらの部にはほとんど顔を出さないため放置状態らしい。