僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「佐方先輩」

すると、撮ったばかりの写真を確認しながら、おもむろに天宮くんが言った。

いまだ写真の話を続けていた佐方副部長が、そちらに顔を向ける。

「僕いつか、ロバート・フランクよりすごい写真を撮ると思いますよ」

いつもおどおどしている天宮くんの突然の堂々とした発言に、全員がしんと静まり返った。

冗談かと思ったけど、天宮くんの表情はしごく真面目だ。

パソコンをタイピングしながら、ブフッと二階堂部長が吹きだす。

「天宮って、たまにひと昔前の格闘家並みにビッグマウスになるのおもろいんやけど」

「世界的に有名なカメラマン相手によくそんなことが言えるな」

佐方副部長は、尊敬する写真家をけなされた気分になったのか、少し怒り口調だ。

「でも本当にそう思うんです。そしたら箱つきの分厚い写真集出版して、そこの棚に並べたい」