僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

いつになく饒舌な彼は、本当に写真が大好きなのだろう。

そんなにも打ち込めるものに出会ったことのない私は、羨ましく感じてしまう。

人のすごいところを目にすると、自分がよりいっそう無価値な存在に思えていたたまれなくなる。

不登校になって以来繰り返されている、いつもの癖だ。

――カシャッ!

シャッター音がして、私は我に返った。

いつの間にか、本を読んでいたはずの天宮くんが私にカメラを向けている。

視界に映ったのは、ファインダーの向こうにある、天宮くんのまなざし。

ほかの誰でもない、無価値な私に向けられた、カメラマンモードのまっすぐな目。

不思議だ。

天宮くんの奏でるシャッター音は、いつも私の心を弾ませる。

そのままでいい――そんなふうに、言ってくれている気がする。

もちろん天宮くんにとっては、モデルになってくれるのが私しかいなかったってだけで、深い意味がないのは分かっているけど。