気づけば五月を過ぎ、カレンダーが六月に変わっていた。

制服のシャツも長袖から半袖に変わり、部室の黒いカーテンをそよそよと揺らすぬるい風に、夏の訪れを予感する。

連日の雨がようやくやんだその日。

今日も部室に入り浸っている私は、パイプ椅子に座って、手持無沙汰に本棚を眺めていた。

二階堂部長はパソコンをカタカタさせていて、佐方副部長はいつものように望遠レンズ磨き。

そして天宮くんは、本棚から取り出した分厚い写真集を眺めている。

天井まである本棚には、箱や、見たこともないような本がぎっしり詰まっていた。

ひときわ目を引くのが、広辞苑並みに分厚い箱入りの本だ。

「ロバート・フランク……」

なんとなく背表紙に書かれた英語を読んでみる。

きっと有名な写真家なのだろう。