僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

そんな人間の写真が、天宮くんの大事なカメラにおさまっているだけで、悪いことのように思えた。

天宮くんは、写真に興味のない私の心を揺さぶるくらい、すごい写真が撮れる人なのに。

だけど。

「でも、僕はとっておきたい」

彼にしては珍しくはっきりと断言された。

思いがけない返事に戸惑いながらも、私は反論を飲み込む。

考え方を変えれば、天宮くんにとって、先ほどのポートレイトは大事な作品。

それをこちらの都合で消してと要求するのは、たぶん失礼だ。

とりあえず、しつこく消してとせがむのはやめた方がいいのかもしれない。

「じゃあ、そのうち消してね」

「約束はできないけど」

天宮くんは曖昧に答えただけだった。

「……もしかして、部室の前に貼られた写真みたいに、掲示したりしないよね?」

それはちょっと嫌だ、いや、かなり嫌だ。