僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「濡れても大丈夫って、けっこうな雨だよ」

「撮影に付き合ってくれたお礼と思ってくれたらいいから」

そう言われても、さすがに天宮くんをビショビショにするのは申し訳ない。

だけど目を合わせないながらも、天宮くんからは有無を言わさぬ空気が出ていて、だんだん私は譲歩するしかなくなる。

「じゃあバス停まで入れてもらえたら……」

「うん、分かった。そうしよう」

パッと、頭上で傘が開かれる。

そのときになってようやく私は、天宮くんと同じ傘に入りたいと自分から提案してしまったことに気づいた。

とたんに恥ずかしくなったけど、意識するほうがもっと恥ずかしい。

ただ濡れたくないから、ほんの少しの間、傘に入れてもらうだけ。

それだけのことだ。

心の中で自分自身に言い聞かせると、私は天宮くんの歩調に合わせるようにして、ゆっくりと歩き出した。