僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

昇降口から出て裏門に向かっていると、ポツッと鼻先にひんやりした感触が落ちてきた。

まさかの雨が降ってきたようだ。

あっという間にザーザー降りになった雨を避けるため、自転車置き場の軒下に避難する。

茜色に染まる空は明るく、雲も少ないのに雨は降りやまない。夕立ちというやつだろう。

どうしよう、早くバスに乗りたいのに。

家までは、ここから二時間かかる。

バスで駅まで行き電車に乗って、さらに電車を乗り換え、家の最寄りまでまたバス。

入学当初は通学だけでヘトヘトになったくらい遠い。だからなるべくサクサクと行動したいのだ。

「傘、貸そうか?」

雨の音の中に、突然人の声がした。

いつの間にか天宮くんが近くの軒下にいて、透明のビニール傘を差し出している。

部活が終わって、彼も帰るところみたい。

「でも、借りたら天宮くんが濡れるんじゃ……」

名前を聞きもしてもないのに、天宮くん、と呼んでしまったことに焦る。

でも、二階堂部長がさんざん彼の名前を呼んでいたし、私もその場にいてしっかり聞いていたのを見られていたのだから、変ではないだろう。

思ったとおり、天宮くんは特に気にしていないようだ。

「べつに、僕は濡れても大丈夫だから」

私の目を見ないまま、うつむきがちに天宮くんは言う。

どうやら、カメラがないととたんに挙動不審モードに戻るらしい。