僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「えっ、私もですか? でも私、写真部じゃないですし……」

「そんな細かいことええやん。私も女の子いてくれたらうれしいし」

二階堂部長は、きっと冗談を言っているのだろう。

そういう、冗談と本気の境目がよく分からないようなタイプの人だから。

曖昧に返事をしたけど、内心まんざらでもないと思っている自分がいた。

ここにいる人たちは、自分の世界を大事にする人で、私がどう反応しようが、どうでもよさそうだから。

いつも人の視線を気にして圧しつぶされそうになっている私でも、肩の力を抜いて一緒にいることができる。

いつになく和んだ気持ちでいると、カシャッとシャッターを押す音が響いた。

天宮くんが、いつの間にかまたカメラを私に向けている。

ポートレイトの練習とやらは、まだ続いていたみたい。

カメラ越しに、彼と目が合う。

瞬間、またドキリと胸が鳴った。

迷いのない澄んだ茶色い目にまっすぐ射貫かれて、一瞬だけ時が止まったようにすら思う。

全身に鈍い電流が流れて、背筋が奮い立つような、不思議な感覚がした。
二階堂部長の話はなかなか止まらなくて、結局、写真部には一時間近く滞在してしまった。

「夏生ちゃん、また遊びに来てな~!」

帰りがけも、二階堂部長は明るく私を送り出してくれた。

話を聞いてもらえたのがよほどうれしかったみたい。私もまんざらでもない気分だった。