僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

二階堂部長はブツブツ言いながらしきりにパソコンとにらめっこしているし、眼鏡をかけた男子部員は相変わらずレンズ磨きに夢中だ。

我関せずといった彼らの様子は、恥かしさでいたたまれなくなっている私を、徐々に安心させた。

天宮くんの態度だってそう。

変に褒めたり気を遣ったりするわけでもなく、ひたすらシャッターを押し続ける彼は、純粋にポートレイトの練習に夢中なようだ。

だんだん私も落ち着いてきて、外の景色を眺める余裕が出てきた。

部室の窓の向こうは、裏門へとつながる錆びたフェンスに面していた。

フェンスの上には、夕暮れの空が広がっている。

水色の空が絵具をこぼしたみたいにところどこと茜色に染まっていて、五月のうろこ雲は黄金色に輝いている。

日暮れを予感させる風が校庭の木々を揺らし、緩やかに部屋の中に吹き込んできた。

こんなふうに、まじまじとこの学校の景色を眺めたのは初めてかもしれない。