僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

無造作な黒髪をした背の高い彼は、目の前にある白黒写真を撮った、天宮陽大その人だった。

動揺のあまり、息のし方を忘れそうになる。

誰にも気づかれないようにひっそりと彼の写真を眺めようと思っていたのに、あろうことか、本人に知られてしまうなんて。

「……勝手に撮ってごめん」

天宮陽大が、私の目を見ずに言う。

初めて聞いた彼の声は、印象とは少し違う、少し低めの声だった。

「でもここまで来てくれたってことは、付き合ってくれるってこと? ポートレイトの練習に」

じりじりと後ずさっていた私は、思わず足を止めた。

「ポートレイトの練習……?」

「うん」

ポートレイトというのは、たしかカメラで人物を撮ることだ。

「あ……」

どうやらこの間彼が言った『付き合って』というのは、『彼女になってほしい』という意味ではなく、『ちょっとそこまで付き合って』みたいな軽い声かけだったみたい。