僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

このクラスにはもともと友達が少なくて、ひとりでお弁当を食べても違和感のないポジションにいるはず。

だいじょうぶ、かろうじて崖のふちぎりぎりに立てている。

だけどどんなに自分を鼓舞(こぶ)しても、泥水が流し込まれたみたいに、胸の中がどんどん重苦しくなっていく。

見える世界はいつもにも増して濃い灰色だった。

次第に、もやもやとした不安がわいてくる。

もしも星羅が一緒にお弁当を食べてくれなくなったら、私はどうなるんだろう?

私と星羅に共通点はない。お互いひとりだから、一緒にいるというだけ。

私たちをかろうじてつないでいるのは、いつ切れるかも分からないもろい絆だけなのだ。

星羅と私は合っていない。

たぶん、星羅もそれを分かっている。

そのせいか、じわじわと迫る恐怖をいつも肌で感じていた。

ぼっちに耐えられなくなっても、もう不登校には戻れない。

絶望的なお母さんの表情を思い浮かべただけで、胸が苦しくなる。

ひとりになると、どんどん思考がネガティブになっていくからやっかいだ。

喧噪であふれ返る教室の中、うつむいてお弁当を食べながら、いつしか私はあの灰色の写真を思い浮かべていた。

私に突拍子のない告白をしてきた、天宮陽大の写真だ。

自分の心模様とそっくりなあの写真を思い出したら、いくらか気持ちが凪いでいく。

天宮陽大はそんなつもりで撮ったのではないだろうけど、私の心の中の世界によく似たあの写真は、ひとりじゃないと訴えかけているようだった。

天宮陽大は、自分の撮った写真を私が心の拠り所にしていることなんて、知る由もないだろうけれど。