僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

夏生さんと同じ地元の中学に進学し、しばらく経った頃のことだった。

昇降口で見かけた彼女に異変を感じた。色が薄くなっている。

見るたびに、彼女の色はぼやけていった。

表情も乏しく、前みたいに笑っている姿を見かけることがなくなった。

何かあったんだろうか。

真実を知ったのは、幼稚園の頃からの腐れ縁の山西が、人と話しているのを耳にしたときだった。

『夏生さんって、最近ハブにされてねえ? マジかわいそ、女子って残酷だよな』

山西の言うとおり、いつの間にか彼女の周りには友達がいなくなっていた。

よりいっそう色を失っていく彼女を見ているだけで、心がすり減るようだった。

そして。

ドンッ!

廊下から走って来た夏生さんにぶつかったとき、彼女の色は消えかかっていた。

色のない周りの景色に溶け込むようにして、わずかに色づいた細い背中が廊下の向こうに消えていく。

クスクスと笑いながら、トイレの方から女子の集団が歩いてきた。

夏生さんが彼女たちと何かあったのは明白で。

ハブにされてる、という山西の言葉を思い出して、僕は胸を無数の針で突かれたみたいな痛みを覚えた。

彼女を救いたい。

遠い昔、彼女が横断歩道で僕を救ってくれたように。