僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

それは、彩色現象と呼ばれる霞病独特の症状によるものだった。

霞病患者は、恋愛感情によって神経伝達物質が激しく活性化したとき、色彩を認識することができるのだ。

つまり僕は、恋をしたらしい。

思春期と呼ぶにはまだ少し早い、十歳だった僕は、真実を知って無性に恥ずかしくなった。

夏生さんはそれからも、僕の目には、唯一色づいて見えた。

全校朝礼のとき、運動会の練習のとき、廊下ですれ違ったとき。

無色の世界に、まるで花が咲いたようだった。

僕は花の色を知らないけれど、皆がきれいだと言うのだから、きれいな彼女と似たような色をしているのだろう。

魔法のように色彩をまとう彼女を、僕はいつも目で追っていた。

彼女が笑えば笑うほど、色彩はよりいっそう濃くなっていく。

どうやら彼女の放つ色彩は、彼女の心情に影響しているらしい。