僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

一年後、思わぬ場所で夏生さんに出くわす。

兄が所属している少年野球チームの試合会場だった。

七回裏になってもノーヒットノーランの、暑いばかりの退屈な試合。

敵チームの観覧席にいた彼女は、突然ベンチから立ち上がると、グラウンドに隣接している公園の方へと走っていった。

暇を持て余していたのだろう。

僕も立ち上がり、あとを追ってみる。

偉人の銅像がど真ん中に建つ閑散とした公園で、夏生さんは座ってゆらゆらとブランコを漕いでいた。

ふたつ隣のブランコで、僕も立ち漕ぎをする。

ボールがバットに当たる音、湧き立つ歓声。

ゆらゆらと、ブランコで交互に前後する僕たち。

きっと彼女は、近くにいる僕のことなんて気にしていない。

一年前に僕を助けたことにも、同じ学校だということにも、気づいていないようだ。

日曜の午後の、まったりとした心地のいい時間だった。

突然、彼女が「あ!」と叫ぶ。

「見て! 太陽の周りに輪っかがある!」

彼女が言うように、たしかに太陽を取り囲む輪っかのような形が、うすぼんやりと見える。

「すごい、奇跡みたい!」