僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「……先生?」

隣で近藤くんが慌てている。

久々に来た学校で、先生が急に泣き出したのだから当然だ。

「あ、あの……」

なかなか泣き止まない私を前に、うろたえている近藤くん。

私は手の甲で涙を拭うと、「ごめんね、急に泣いちゃって」と微笑みを浮かべた。

これ以上生徒を困らせてはいけない。

「この写真を撮った人の宝物よ。もとに戻しておきましょう」

『僕いつか、ロバート・フランクよりすごい写真撮ると思いますよ』

彼の言葉を、またひとつ思い出した。

天宮くんがここにアルバムを忍ばせたのはきっと、ふたりで病院を抜け出した日の翌日だ。

天宮くんのお母さんが、夕方ふいに天宮くんがいなくなったと言っていた日。

前日に土手で撮った写真を加工してプリントアウトし、生徒の下校した時間を狙って、部室に行ったのだろう。