僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

どんなに晴れていても、相変わらず心の中はどんよりとしていた五月の中頃。

「すみません」

下校の時間、バス停に向かうために裏門から出ようとしていたところ、急に背中から声をかけられた。

立っていたのは、無造作な黒髪をした、背の高い男子だった。

私は戸惑いながら、彼を見つめた。

たぶん、同じクラスの人ではない。

だけどどこかで見たような気がするから、同じ二年生かもしれない。

細身のスラリとした体つき、180センチはありそうだ。

学校指定の紺色のネクタイに、白のシャツ、紺色チェックのズボン。目鼻立ちはわりと整っている部類。

それなのにどことなくあか抜けない印象を抱くのは、おどおどとした挙動不審感あふれる目つきのせいだろう。

「付き合ってくれませんか?」

「へ」

そういったことを言われるとは一ミリも予想していなかったから、驚きすぎて間抜けな声が出た。

頭の中によみがえったのは、中一の頃の苦い記憶。

バドミントン部の先輩からの告白がきっかけで、私の人生はあっけなくおかしくなった。

こういうとき、どう対応したらいいのか分からない。