僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

「ただいま」

「おかえり。今日はちょっと遅かったのね」

午後七時。

帰宅してリビングに入ると、キッチンにいたお母さんが心配そうに声をかけてきた。

ダイニングテーブルには、私とお母さん、ふたり分のご飯が準備してある。

いつも帰りが遅いお父さんは家でご飯を食べることがめったになく、春に大学生になったお兄ちゃんもひとり暮らしを始めたばかりで家にはいない。

「うん。電車が遅延しちゃって」

「そう。学校ではうまくいってるの? 新しいクラスで友達できた?」

「いるよ。星羅って子」 

とたんにお母さんは、心配そうな顔から一転してうれしそうな顔をする。

「あら、そうだったのね。よかったわね!」

お母さんのそのホッとした笑顔が、私の胸をギスギス締めつける。