僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

さくら色、やまぶき色、こがね色、わかば色、あさぎ色、ぐんじょう色、すみれ色。

「見て、天宮くん。日暈が出てる」

顔を上げた天宮くんの茶色の瞳が、大きく揺らいだ。

どこを見るでもなかった瞳に光が宿る。

――見えてる。

生き生きとした彼のその目を見て、暗転症状が治まったのだと気づいた。

「見える?」

「よく見える。今までで一番はっきり見えるくらいだ」

天宮くんが、腕の中にいる私に子供みたいな笑顔を見せる。

「〝奇跡の虹〟なんだろ?」

「うん。見たらいいことがあるんだって」

「それなら、今度は僕もカメラで撮らないと」

リュックからカメラを取り出し、空に向けて構える天宮くん。

先ほどまで暗転症状に怯えていたのが嘘みたいに日暈の撮影に夢中になっている彼を、私はずっと見守っていた。

彼が納得いくまで写真を撮り、帰ろうと口にするまで。