僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

天宮くんが手にしているのは、分厚いROBERT FRANKの写真集だった。

天宮くんと行った写真展でも、その人の写真を見たことがある。

撮影者はもうこの世にいないのに、写真に注いだ魂だけがこの世に残って、燦然と輝いているみたいだった。

天宮くんの写真を思い出す。掲示されたほかの写真とは明らかに異なる、白黒の写真。

天宮くんだけが見ている、独特の彼の世界。

天宮くんの目が見えなくなっても、彼が見てきたあの世界は、永遠に写真として残るだろう。

ずっと大事に見続けようと、私は固く心に誓った。

私たちはそうやって、写真部の部室でまったりとした時間を過ごした。

気づいたときには、午後二時に差しかかろうとしていた。

「かなり長居しちゃったね。早く帰らなきゃ」

「分かった。心配しないで、夏生さんには迷惑かけないから」

天宮くんは素直にうなずくと、手を差し出してくる。